タイトル制作テーマ・技法
私は日本の花をモチーフに制作しています。
作品の材料には、アクリル絵の具と黒箔を使っています。アクリル絵の具は比較的新しい画材で、最近では油絵の具にも負けない発色や透明感を持つものも作られています。強い耐久性と乾燥の早さが特徴で、まさに多忙な現代の画家のための画材と言えます。
黒箔は銀箔を酸化させて作った黒い金属の箔で、独特の風合いを持っています。黒箔は箔の中で最も脆く、扱いが難しいと言われています。私はこの金属の箔を貼った板にメノウを擦り付け磨くという、中世ヨーロッパの祭壇画に用いられた伝統的な技法で制作しており、神秘的に輝く絵を目指しています。
今年の干支の酉を描いてみました。
箔の貼り方もわかるので是非チェックしてみてください。
1.ジェッソで地塗りを施したシナベニヤのパネルにモチーフの輪郭線を描きます。
2.マスキングフィルムを画面全体に貼り、デザインカッターで輪郭線を切り取ります。
3.図像の部分以外のマスキングフィルムをはがします。
4.背景部分に紺色のアクリル絵具を塗ります。(この上に貼り付ける箔に寒色のニュアンスを持たせ、背景を奥へ見せるというねらいがあります。)
5.膠を刷毛で塗ります。(膠は2度に分けて塗ります。1度目に塗る膠を捨て膠といい、2度目に塗る膠の定着を強める役割があります。)
6.箔を膠が乾かないうちに貼り付けます。(箔を貼り付ける作業を箔押しとも言います。)私は黒箔という、銀箔を酸化させて作った箔をよく使います。
7.1日乾燥させたあと、箔の表面をメノウ棒で磨いていきます。これは、中世のヨーロッパの祭壇画によく用いられた技法です。それらの多くは金箔を用いており、黄金背景テンペラと呼ばれました。
根気よく磨いていくと、周囲の風景が映り込むほどの金属光沢が出てきます。
メノウ棒には下の画像のようにいろいろな形があります。
8.磨き終わったら、保護スプレーを吹き付けます。
9.白い地塗りの上にモチーフを描いていきます。最後に、アクリル系のニスを塗り、図像部分にも光沢を与えます。
10.ニスが乾けば完成です。